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裁判員裁判について 2~バカにしてる?

「裁判員裁判について 2~バカにしてる?」

今回も引き続き裁判員裁判について。

最高裁によれば、裁判員裁判の審理期間は約7割の事件は3日以内に、約9割の事件は5日以内に終了するとされています。
裁判員の負担を軽減しなければならないから、だそうです。

例えば、1審だけで3年7か月、95回の審理に及んだ和歌山カレー事件のような、本格的な否認事件(犯罪事実を認めないものなど)でも同じ、だと。

それが可能なのは「核心司法」を徹底するから、と言います。
「核心司法」とは、争点を真に必要な範囲に絞り込み、証拠を裁判員が理解可能な範囲に厳選し、無駄を省いた証拠調べを実施する、だとされます。
こういった争点絞り込みや証拠の厳選は、裁判員が参加する前段階の準備手続きの中で行われることになります。


そうすると、裁判員が参加する公判段階では、争点が「真に必要な範囲」に絞られ、証拠が「厳選」された後の、いわば下ごしらえ済みの事実しか出てこないことになります。

しかし、きちんとした証拠調べや当事者の主張を聞いていない段階で、裁判員抜きで、「真」の争点を見極め、証拠を「厳選」してしまうことは、結局は職業裁判官のイニシアチブで裁判を進行させ、裁判員はお客様程度に参加してもらうことになってしまうと考えます。
「市民参加」といいながらも、「9人いる合議体にあっては広く精緻な合議を尽くすことは困難」(最高裁)だから、下ごしらえ済みの事実しか出さないという発想がうかがえます。

職業裁判官がきちんと下ごしらえをしておくから、裁判員は簡単なところだけ参加してくれればいいよと言っているようです。
なんとなく、裁判員として参加する市民を馬鹿にしたような姿勢を感じます。

もちろん、被告側としても、そんな下ごしらえを法廷以外の場で行われる訳ですから、法廷できちんとした裁判を受ける権利が制約されることになります。


たしかに、裁判員の負担軽減は必要です。
しかし、それと引き換えに、下ごしらえによる簡略化で事実が切り捨てられ、被告の権利が制約されることはあってはならないのではないか。そう感じます。

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by lawyer-nishikawa | 2009-08-18 11:25 | 刑事事件のこと

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