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大学院生医師の事故死について、鳥取大に賠償を命ずる判決

「大学院生医師の事故死について、鳥取大に賠償を命ずる判決」

先日10月16日、鳥取地裁で、鳥取大の大学病院で医師として稼働していた医学部大学院生が交通事故死した事件で、大学側に2000万円の損害賠償を認める判決がありました。

この大学院生は、大学病院の外科で「演習」として無給で医療業務に従事していたようです。
訴状などによると、同大学院生の業務内容は勤務医とほぼ変わらず、24時間オンコールの状態。死亡直前3カ月は当直や緊急手術などで休日がほとんど皆無。当日も前日からの緊急手術で徹夜のあげくに、次の勤務先(大学病院等が紹介したアルバイト先の病院)へ行く途中に、トラックと衝突、死亡したそうです。

争点となった安全配慮義務について大学側は、「診療は授業科目の『演習』であって、自由意思で辞められるもので『業務』ではない」と主張して、大学側には安全配慮義務が発生しないと主張したようです。

これに対して判決は、大学院生の労働者性には言及せず、「院生として在学し、診療もしていたのだから安全配慮義務があったのは明らか」とし、院生が極度の疲労や睡眠不足に陥ることを避ける必要があったと指摘し、大学側の安全配慮義務違反を認めました。指導医が院生のアルバイト先などを取りまとめて割り当てていたことから、そこでの業務も含めて配慮すべきとしています。

このように研修名目のもと、院生を無給で医師として医療業務に従事させる場合には、その院生と雇用契約を結ぶよう、文部科学省からの通知もされているそうです。

明確な雇用契約がない本件において、安全配慮義務違反が認められたのですから、ましてや勤務医として雇用契約を結んでいる場合に、同じようなことが起これば、雇用している病院側が責任を問われる可能性が高いと考えられます。

もちろん、若手の勤務医や大学院生が、医師としての研鑽を積む必要性もあります。

しかし、その研鑽が度を過ぎて、過酷な長時間労働を強いることは、まず勤務医ら自身の生命・身体を危険にさらすだけでなく、診療対象となった患者の生命・身体を危険にさらすことにもなります。
そして、そういった業務形態に配慮しなかった病院側は、その責任をとらなければならないことになります。

もっとも、勤務医や大学院生に過酷な長時間労働を強いている原因は、病院だけではなさそうです。
診療報酬制度や医師養成の制度など、社会的に解決しなければならない問題がたくさんありそうです。

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by lawyer-nishikawa | 2009-10-21 13:01 | 病院のこと

捜査手続きは人質手続き

「捜査手続は人質手続」

こんばんわ。
またもやの沖縄出張から帰ってきました。


刑事訴訟法上の身柄拘束は、次のように規定されています。
まず、捜査機関は被疑者を逮捕した場合、その後も身柄拘束が必要と判断すると、最大72時間以内に、裁判所に対して勾留という手続で被疑者の身柄拘束をするよう請求します。
裁判所は、この請求に対して被疑者に逃亡や証拠隠滅のおそれがないか、嫌疑は相当かなどを検討して、勾留を認めるかどうかの決定をします。もし、勾留が認められると、原則10日間、その後の延長が認められるとさらに10日間、身柄拘束が行われることになります。
そして、検察はこの間に起訴するかどうかを決定することになるわけです。

あくまでも一般論ですが、現在の刑事手続にあっては、逮捕が認められた場合、その後に引き続く勾留はほとんどの場合に認められます。
その勾留決定に対する異議申立て(準抗告と言います)は、ほとんどが認められません。
そして、その後の勾留延長が請求された場合は、これもまたほとんどが認められてしまいます。

この身柄拘束が続く間、被疑者とされた人は捜査機関からの取り調べを受け続けます。
身柄を拘束されると、四六時中、捜査機関の監視下に置かれます。弁護士以外とは会わせてもらえないこともあります。もちろん、取調べの時は警察(または検察)と一人で対峙しなければなりません。

自分は想像するしかありませんが、非常に過酷な状況に置かれ続けます。
そんな中で、自分の主張をきちんと貫くことができる人は、そう多くないと思います。
早く身柄拘束から脱したいがために、やっていない罪を認める人もいるでしょうし、そこまでいかなくとも、自分に不利な事情を認めてしまう人も多いと思います。

弁護人としても、がんばって自分の主張を貫いてもらうべきなのですが、ご本人の仕事や家族のことを考えると、そればかりも言っていられない場面もあります。
まさに、人質に取られているがために、主張を制限せざるをえない。
場合によっては、外に出してもらいたいがための虚偽自白をしてしまう可能性もあります。

少なくとも、逃亡や証拠隠滅のおそれが抽象的に存在するだけで身柄拘束を認めるのではなく、具体的な「おそれ」があってはじめて身柄拘束を認めるようにする、などの根本的な制度改善が必要でしょう。

そんなことは、はるか以前から指摘され続けてきていますが、今回の裁判員裁判導入の「改革」に際して、改善策がとられることはありませんでした。


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by lawyer-nishikawa | 2009-10-15 08:27 | 刑事事件のこと

オンコールは労働時間か

「オンコールは労働時間か」

勤務医の勤務形態の一つに、オンコールというのがあるそうです。

夜間や休日、病院にいなくてもよいが、いつでも電話がつながるようにして対応ができるようにし、「病院の半径●㎞以内」とか「●分以内に病院に来れる範囲」といった病院からの一定範囲内にいなければならないというもの。
もし、病院で何かあって人手が足りない時など、連絡があれば病院まで駆けつけます。そうでなくとも、電話での問い合わせに応じるなどして緊急事態に対応。

このオンコール、病院に呼ばれて処置をすれば手当が多少支給されるも、電話対応だけだったり、何もなかったりした場合には、手当もでないというのが一般的なようです。

このような取扱は、認められるのか。
「労働時間」とは何かという問題です。

最高裁判例によると、労働基準法上の「労働時間」とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間であるとされます(三菱重工事件)。
また、労働者が実作業に従事していなかったとしても、それだけでは使用者の指揮命令下にないとはいえず、当該時間に労働者が労働から離れることを保障されて初めて、労働者が指揮命令下に置かれていないと評価でき、労働からの解放がなく、労働契約上の役務提供が義務付けられている場合には使用者の指揮命令下に置かれているとされます(大星ビル管理事件)。この結果、いわゆる待機時間(手待ち時間)も労働時間に当りうるということになります。

では、オンコールの場合、使用者の指揮命令下に置かれていると言えるのでしょうか。

まず、オンコールの時間は、電話があれば対応すること、さらに必要があれば病院まで駆けつけることを要求されていることからすれば、労働からの解放はないと評価することができると考えられます。

では、指揮命令下に置かれていたと評価できるか。

前回紹介した奈良病院の裁判例でも、このオンコールが指揮命令下にあるかが問題となりました。
裁判例の事案では、産婦人科医師らの自主的な取り決めであるとの事実認定を前提に、病院がオンコールを認識していたとしても、病院が指揮命令を行った事実が認められないことなどを理由に、労働時間に当たらないとしています(原告ら医師側はこれを不服として控訴しています)(産科医宿日直勤務割増賃金請求事件)。

しかし、現実問題としては、オンコール体制がなければ、夜間・休日の医療体制は成り立たない場合が多いのではないでしょうか。
何かあった時に、指示を仰いだり、必要なときには病院まで来てもらえる体制があってこそ、十分な医療サービスを提供できるような場合には、オンコールがなければ宿日直制度は成り立たないといえるように思われます。

そうすると、指揮命令は(最高裁判例によっても)明示的なものでなく黙示的なものでもよいと解される点からすると、少なくとも病院からの黙示的な指揮命令下にオンコール体制が取られていると評価できる場合が多いと考えられます。
単なる医師の自主的なボランティアと評価しきれない、医療体制上の不可欠性があるような場合、です。

上記裁判例では、オンコール体制がなければ宿日直制度が成り立たないといえるか、病院が指揮命令を行ったかどうかが、争点となったようです。
このへんは事実認定の問題として、今後、判断が分かれていくような気がします。

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by lawyer-nishikawa | 2009-10-10 23:44 | 病院のこと

勤務医の宿直勤務は本当に「宿直」か

「勤務医の宿直勤務は本当に『宿直』か」

前回で触れたように、病棟の勤務医においては宿直勤務、日直勤務があるそうです。

科によっても違うようですが、忙しい科においては、宿直勤務、日直勤務とも、ほとんど通常勤務と変わらない場合もあるとか。

けれども、そのような忙しさでも、給与計算上は、宿直手当や日直手当等のわずかな定額の金銭しかもらえない。

では、法律上はどのように考えるべきなのでしょうか。

この点についての、最近の注目すべき裁判例として、産科医宿日直勤務割増賃金請求訴訟というのがあります。
これは、奈良県立病院に勤務する医師が、宿日直勤務、宅直勤務について割増賃金を請求した裁判です。

ところで、本来、宿直勤務とは、その時間中、例えばかなり寝ることができるような勤務形態が想定されています。
労働基準法上は、同法41条において「断続的労働」として規定され、残業代を支払わなくとも宿直勤務に従事してもらえることになっています。

では、勤務医の宿直勤務は、すべて「断続的労働」に該当し、残業代の支払い対象にならないのか、これが上記裁判でも問題になったところです。

「断続的労働」とは、実作業が間欠的に行われ、手待ち時間の多い労働のことを言います。
ただ、この点については、医療機関が、実態は間欠的作業でもないのに、「断続的労働」として処理している例が多いとして、厚生労働省より通達が出ています(厚生労働省基発第0319007号)。
そこでは、「断続的労働」にあたる宿日直勤務とは、「当該労働者の本来業務は処理せず、構内巡視、文書・電話の収受又は非常事態に備えて待機するもの等であって常態としてほとんど労働する必要がない勤務」であると規定されています。

この定義によれば、かなりの宿直勤務は「断続的労働」であるとは言えなくなり、宿直勤務として処理してきた行為は違法であって、別途残業代を支払う必要が在ることになりそうです。
上記裁判においても、産科医のおかれている特別な事情(異常分娩の手術等も行わなければならないなど、その対応の回数や性質)をふまえ、「断続的労働」の範囲を超えるとしました。

いろんな科の置かれている現状から、それぞれ検討する余地がありそうです。

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by lawyer-nishikawa | 2009-10-09 01:46 | 病院のこと

勤務医~過酷な宿日直

「勤務医~過酷な宿日直」

勤務医というのは、厳密にはどこまでの範囲を指すか議論がありますが、とりあえず開業しておらず、どこかの病院に勤めているお医者さんを指します。

勤務医の先生方は、科にもよるそうですが、すさまじい労働を強いられているそうです。

一般的なデスクワークなら、労働時間は月曜から金曜までの間で、午前9時から午後5時か6時ころまで、というのが通常だと思います。
もし、夜働くのであれば、夜勤というシフトが用意してあって、午後10時から午前6時までとか決まっていて、夜勤が明ければ、帰ることができます。

ところが、勤務医の場合、夜勤という概念はほぼないそうです。
代わりにあるのが「当直」。

当直にあたると、朝きちんと病院に来て外来診察や病棟巡回の仕事をこなす。
そして夕方からそのまま「当直」として病院に泊まる。
そして翌朝からは、また通常勤務をこなす。

「当直」というのは労基法規則における「宿日直勤務」の宿直勤務。
厚生労働省によると、「本来業務は処理せず、構内巡視、文書・電話の収受又は非常事態に備えて待機するもの等であって常態としてほとんど労働する必要がない勤務」だそうです。
まー、守衛さん的な仕事に近いものを想定しているようです。

しかし、現実をお聞きすると、科にもよるが、翌朝までなんら日勤と変わらない業務を強いられるようです。
そして翌朝もそのまま日勤で仕事。
長い時には宿直前の日勤と合わせて、40時間連続で働いたこともあるとのこと。
看護師さんらが「夜勤」というシフトで働いているのとは大違い。
もはや、物理的な人間としての限界に挑戦!といった感じです。

さすがの厚生労働省もこの点については通達を出すなどして、適正化が図られるように指導しているようですが(平成14年3月19日基発0319007号)、現実にはまだまだ。

そんななかでも、勤務医の先生方ががんばっておられるのは、人を救いたいという純粋な職業倫理からだと思われます。

しかし、心身を壊してしまってからでは取り返しがつきません。
なんとかできないのか、今後考えていきたいと思います。

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by lawyer-nishikawa | 2009-10-06 12:56 | 病院のこと

経営学とは、何か

「経営学とは、なにか」

自分が属している経営者団体では、「学び」をとても大切にします。
日々、学ぶ。

では、その集大成(かも知れない)経営学とは、なにか。

経営学とは、経営を理論化、学問化したものです。

では、経営とはなにか。

人、物、お金、さらに情報を組み合わせ、よりよい成果を得ることを指す、とモノの本にありました。

ところが、人、物、お金は、絶対的に有限、しかも少ないことがほとんどなので、それを情報や知恵で補う。
だから経営は難しいことになります。
情報や知恵は、人が集約する。
だとすると、経営学とは、人が集約するその情報や知恵を、理論化・体系化したものだということが言えそうです。

モノの本には、経営は現場で行われるもの。
だから、学問である経営学は、どうしても後追いになるらざるをえない、とありました。

たしかに、学問が、ばらばらに存在する情報を理論化・体系化するものである以上、はじめに実践された情報が存在するのは、やむを得ないのだと思います。
重要なのは、その理論化・体系化された情報をうまく使って、次の新しい課題を切りひらいていくことですよね。
そのために、学問としての経営学が存在しているというわけです。

きちんと学んで、未曾有の経済危機を乗り切るお手伝いができれば、と思います。
(おこがましいですが…)

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by lawyer-nishikawa | 2009-10-02 06:58 | 経営のこと

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