オンコールは労働時間か

「オンコールは労働時間か」

勤務医の勤務形態の一つに、オンコールというのがあるそうです。

夜間や休日、病院にいなくてもよいが、いつでも電話がつながるようにして対応ができるようにし、「病院の半径●㎞以内」とか「●分以内に病院に来れる範囲」といった病院からの一定範囲内にいなければならないというもの。
もし、病院で何かあって人手が足りない時など、連絡があれば病院まで駆けつけます。そうでなくとも、電話での問い合わせに応じるなどして緊急事態に対応。

このオンコール、病院に呼ばれて処置をすれば手当が多少支給されるも、電話対応だけだったり、何もなかったりした場合には、手当もでないというのが一般的なようです。

このような取扱は、認められるのか。
「労働時間」とは何かという問題です。

最高裁判例によると、労働基準法上の「労働時間」とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間であるとされます(三菱重工事件)。
また、労働者が実作業に従事していなかったとしても、それだけでは使用者の指揮命令下にないとはいえず、当該時間に労働者が労働から離れることを保障されて初めて、労働者が指揮命令下に置かれていないと評価でき、労働からの解放がなく、労働契約上の役務提供が義務付けられている場合には使用者の指揮命令下に置かれているとされます(大星ビル管理事件)。この結果、いわゆる待機時間(手待ち時間)も労働時間に当りうるということになります。

では、オンコールの場合、使用者の指揮命令下に置かれていると言えるのでしょうか。

まず、オンコールの時間は、電話があれば対応すること、さらに必要があれば病院まで駆けつけることを要求されていることからすれば、労働からの解放はないと評価することができると考えられます。

では、指揮命令下に置かれていたと評価できるか。

前回紹介した奈良病院の裁判例でも、このオンコールが指揮命令下にあるかが問題となりました。
裁判例の事案では、産婦人科医師らの自主的な取り決めであるとの事実認定を前提に、病院がオンコールを認識していたとしても、病院が指揮命令を行った事実が認められないことなどを理由に、労働時間に当たらないとしています(原告ら医師側はこれを不服として控訴しています)(産科医宿日直勤務割増賃金請求事件)。

しかし、現実問題としては、オンコール体制がなければ、夜間・休日の医療体制は成り立たない場合が多いのではないでしょうか。
何かあった時に、指示を仰いだり、必要なときには病院まで来てもらえる体制があってこそ、十分な医療サービスを提供できるような場合には、オンコールがなければ宿日直制度は成り立たないといえるように思われます。

そうすると、指揮命令は(最高裁判例によっても)明示的なものでなく黙示的なものでもよいと解される点からすると、少なくとも病院からの黙示的な指揮命令下にオンコール体制が取られていると評価できる場合が多いと考えられます。
単なる医師の自主的なボランティアと評価しきれない、医療体制上の不可欠性があるような場合、です。

上記裁判例では、オンコール体制がなければ宿日直制度が成り立たないといえるか、病院が指揮命令を行ったかどうかが、争点となったようです。
このへんは事実認定の問題として、今後、判断が分かれていくような気がします。

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by lawyer-nishikawa | 2009-10-10 23:44 | 病院のこと

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